第2回  日本の少子化問題、待ったなし?(前編)

 
 ■電車でベビーカーが使えない国、日本
  
 「KAIZENのタネ」一つ目は、この国の将来を揺るがす大問題とも言える、「少子化」です。
前編・後編の2回に分けてお話ししていきます。

 国土交通省が2016年12月8日に発表した調査結果で、「迷惑だから、ベビーカーは電車に持ち込まないでほしい」と思っている人が、全体の約2割もいることがわかりました。
 実際、電車でベビーカーを使うと嫌な顔をされることがあります。舌打ちされることだってある。
 ベビーカーを押しているお母さんも邪魔者扱いされるし、階段などで手伝ってくれる人が少ない。
 ちなみに、僕は率先して手伝うタイプ。この間、ある駅の階段の下に立っているお母さんに「持ちましょうか?」と声をかけ、さっとベビーカーを抱えて階段をパパパっと上った瞬間、「すみません、今降りたところでした」と言われちゃったけどね。

 周りの人の迷惑になるから、電車やバスではベビーカーを使えない。
 託児所の数が足りないから、子どもが生まれたら親は仕事ができない
 「子どもの声がうるさいからだめ」という主張が自治体に認められ、託児所が建てられない。
 …悲しいけれど、これでは日本で少子化が進むのも仕方がないかな、という気もしてしまいます。

 僕が東南アジアの国々を旅するたびに驚くのは、子どもの多さ。
でもそれより驚くのは、街中を走り回る子どもに対する、大人たちの優しい眼差しです。
 ヨーロッパなど出生率がそれほど高くない国でも、街中で子どもが遊んでいる姿をよく見かけます。
 だけど、日本、特に都市部では、子どもが遊ぶ姿をほとんど見なくなりました。

 では、日本でどのくらい人口減少が進んでいるのか、実際の数字で見てみましょう。
 国立社会保険・人口問題研究所の推計では、日本の少子化がこのまま進めば、今の1億2000万人から、2050年には9000万人前後、2105年には4500万人まで人口が減る見込みと言われています。
これからの100年で、約3分の1まで減ってしまうということです。
 
 年齢別に見ると、年々、64歳以下の割合が減少していて、1970年に65歳以上が人口の7%を超える「高齢化社会」に、94年に14%超の「高齢社会」に、2007年には21%超の「超高齢社会」に入りました。
 このままでは15〜64歳の労働人口が減り、経済にも大きな悪影響を与えると言われています。
 ましてや高校への進学率が97%を超えている今、15歳以上を「労働人口」とするのは、もう時代遅れといえるでしょう。実際に働く人数を考えると、もっと深刻な事態になっています。
 
 いずれにしても、少子高齢化が進むということは、国全体の労働力が下がり、大人数のお年寄りの方々の生活を少ない労働人口で支えなくてはいけないということだから、社会保障や財政にも影響を及ぼします。
 現行の年金制度では、団塊の世代が背負ってきた負担と、若い世代がこれから背負わなくてはいけない負担は大きく違いますから、不公平感が生じ、世代間で衝突が起きる可能性もあるでしょう。
 また、地方の過疎化もさらに進む見込みです。

 
■ 先進国では、子どもは労働力から「贅沢な趣味」へ
 
 かつて農耕社会では、子どもは親にとっての必要不可欠な労働力でした。
幼少期に亡くなってしまう子どもも多かったため、女性は多くの子どもを出産しました。
 でも、時代が進んで技術が進化すると、栄養面や衛生面の向上、また医学の発達などにより、先進国では「多産多死型」から「多産少死型」に変わり、産業革命以後は一気に人口が爆発します。
 そして産業化と都市化が進んだ地域では、農場などでの大量の労働力が必要なくなり、徐々に「子ども=労働力」ではなくなってきました。女性の教育と社会進出が進み、避妊の知識や技術も普及しました。
生む子の数も減り、3歳以下の子どもの死亡率が減ると、今度は「少産少死型」に移ります。
 
 こんな流れを経て、先進国では1960〜70年代にかけて、出生率がどんどん減りはじめたのです。
日本だけでなく、生活環境が整って教育がいきわたると、大抵の国で少子化に変わっていきます。

 当然、社会形態と同時に考え方も変わったのです。極端に聞こえるかもしれませんが、今の時代では、もはや子どもは親を支えるための労働力ではなく、むしろ親が手をかけ、お金をかけて育てる「贅沢な趣味」になっているのかもしれません。だって、畑で働いて家計を支える昔の子どもと違って、今の子どもは衣食住のほか、習い事や教育費、DSのソフト代などでお金がかかりっぱなし。
 AIU現代子育て考によると、日本の場合、22歳まで1人の子どもを育てるために1600万円以上かかるそうです。今の子どもは家業の手伝いをするわけでもないし、核家族社会で老後の面倒を子どもに見てもらえる保障もない。個人レベルでいうと、子育ては必要だからではなく、もはや好きでやることですね。
 ちなみに僕は遊びで卓球をやっているけど、この20年で計5万円ぐらいしかかけていない。子育ては、かなり高級な趣味ですね。

 でも、多くの先進国で人口減少が続いている一方、世界全体ではいまだに人口が増え続けています。
 国連の予想では、世界の人口は現在の約73億人から、2050年頃には98億人に、2100年には112億人まで増えると言われています。
 これはある程度、先進国の「せい」でもあります。20世紀以降、欧米諸国の人々はNGO活動を通じて発展途上国の環境改善に協力してきました。栄養、衛生、治安、医療、いろいろな面で新興国の皆さんの生活向上に貢献しました。
 当然、そこで児童死亡率が下がり、人口が増え始めました。そこで先進国の皆さんがまた人口抑制の方法、つまり避妊の方法を発展途上国の人々に広める運動もすれば良かったのですが、その運動には、ほとんど取り掛からなかったのです。
 なぜなら、カトリック系の国では、「避妊は罪である」と教えられてきたからです。

 ……いやいや、そんな薄いゴム1枚で、神さまを止められるの?!
 と僕は思ってしまうのですけど、「コンドームは神の意思に反する」と考える人もまだ多いのだとか。カトリックじゃなくても、「セックスは夫婦間だけのもの」と思っているキリスト教徒は多いのです。「避妊具を渡すと、皆、婚前セックスして、非道徳で卑猥な行為に走る!」と思っている人もいる。
 よって、
アメリカも含めてキリスト教徒の多い国では、医療関係のチャリティに寄付する時は避妊方法を教えないとか、政府のお金はコンドームの配布には使わないという条件が付くこともあります。
 

 こういう理由で、アフリカやアジア諸国で人口が増え続けています。
 しかし、同じペースでは農業の生産率は上がらないし、経済は成長しない。各地で食糧不足も環境破壊もおきます。ほとんどの場合、雇用の数も足りなくなります。

 このような背景で、人口が爆発してお金がない国から、人口が減少してお金が余っている国に、人間が移動していくのは自然の流れと言えるでしょう。浸透圧と同じようなもの。浸透圧がわからない方は気にしないでください。僕もよくわかりません。

 
 ■少子高齢化は、むしろ日本にとってチャンス?
 
 前置きが長くなりました。
ここで、日本の人口減少をどうするかという話に戻ります。
 少子高齢化は難題ですが、対策がないわけではありません。僕は、ここで明確な答えを出すのではなく、あくまで皆さんが考える材料として、「こんな考え方もあるよ」といくつかの方法をあげてみたいと思います。大事なことは、日本の皆さんが何を選ぶかということです。

 さて、日本の人口減少を食い止めるための方法、その1は…。
 世界中から「移民」を受け入れること。
 
 欧米の多くの国のように、現在の移民政策を大きく改正すれば、スキルや労力、モチベーションを持った元気な若者たちが、世界中からお金のある日本にやって来ることでしょう。考えてみれば、22歳の時に来日した僕も、そんな一人ですね。
 ただし、この場合に問題となるのは、やはり日本の皆さんの文化的、感情的な抵抗感です。
 人間の移動にともなって文化の衝突や宗教の衝突が起きるのも、また当然の結果だからです。僕も毎日のようにマックンと衝突してきました。
 移民が日本に押し寄せてきたら、社会が混乱する!と思っている人も多いかもしれません。
 この問題に関しては、次回、きちんと書きたいと思います。

 日本の人口減少を補う方法、その2。
 それは、前回も書いたように、「AI(人工知能)革命」です。
 
 
これから徐々に、今人間がやっている仕事の3〜5割をAIやロボットがやるようになると推測されます。もちろん、同時に新しく生まれる新種類の仕事もあるはずだけど、同じだけの数の雇用が生まれるのを期待するのは、危険なぐらい甘すぎる見込みだと思います。
 人口が増加している国々では、このままAI化が進めば、失業率が急上昇し、貧富の差もさらに激しくなるだろうと大きな脅威を感じています。
しかし、日本は違います。人口は増えていない。逆に減っているのです。
人口が増加している国に比べて、減少している国の方が、AI化による摩擦は起きにくいでしょう。いや、労働人口がますます減少する日本では、AIやロボットはむしろ、ちょうどいい救世主になるかもしれません。日本が直面する長時間労働や過労死の問題も、AI化で解決できるかもしれません。
 ひょっとしたら、人口減少によって、むしろ今より日本人は幸せになるかもしれない。
少子化万歳! …となるかもしれません。

 だけど、現実がそううまくいくとは限らない。虫のいい、甘い話になってしまう可能性もある。
 また、未知数の人口知能やロボットより、やはり生身の人間がいいと思う人も多いかもしれない。
 
 移民の受け入れも嫌、AIもロボットも嫌というなら、

やはり出生率そのものを上げる努力をしなくてはいけません。
 では、

次回は出生率そのものを上げる方法について考えてみましょう。

次回、「少子化問題、待ったなし?」(後編)は、10月20日(金)公開予定です。

コメントは受け付けていません。