伴田良輔 パズリカ対談
谷川 俊太郎さん(詩人)詩とパズルと絵本の話
世界が解答のないパズルだとすれば、詩人はその解答にもっとも近いところへ迫っていく
パズリストなのではないだろうか。新しい本、詩、言葉あそび、絵本、旅について、もはや誰もが認める国民的詩人、谷川俊太郎氏に梅の花咲く2月、ご自宅でお話をうかがった。子どものころ、家にあったタングラムで遊んだそうである。その4 インドと年輪と、楽器の話
その1   記憶の中のちぶさ   2011.03.18 UP!
その2   アクロスティックと教科書の話   2011.04.01 UP!
その3   詩のメディアをひろげる   2011.04.15 UP!
その4   インドと年輪と、楽器の話   2011.04.28 UP!
その4 インドと年輪と、楽器の話

伴田

昨年出た谷川さんの
『ぼくはこうやって詩を書いてきた』を今読んでいます。
今まで知りたかかったことがご本人からいろいろ聞けて、
ファンには本当に嬉しい本です。
詩もたくさん引用されていますし。

谷川

ええ。山田馨さんががんばってくれて。
ぶ厚いんですけど、読みやすいんですよ。
酒飲みながらしゃべってることですからね(笑)。

『ぼくはこうやって詩を書いてきた 谷川俊太郎、詩と人生を語る』

伴田

最近、インドに行かれたとか。
いかがでしたか。

谷川

相変わらずのインドで安心したって感じです。
われわれが行ったブッダガヤというところは、
仏さまが悟り開いたところで。
昔ながらの、牛がいて、ジャージャーおしっこしてて。
うんこ踏まないようにするのが
たいへんだったようなところでしたから。
ブッダの時代から3代目の菩提樹があるっていうのがすごいなって。
ブッダって何千年も前の人でしょ。
今回は老人介護の専門の人たち、および編集者たち、
8人で行ったんです。
で、ブッダが悟りを開いたところで、
お前は詩を書けって言われて。

伴田

書かれたんですか?

谷川

観光地みたいなところではとうてい書けないので、
ホテルに帰ってから書きましたけれどね。
それで翌日野外で詩の朗読を聴いてもらって。

伴田

いいですねー。
そういえば谷川さんは人間の年齢を
木の年輪にたとえていらっしゃいますよね。

谷川

自分の中に幼児的なものがあるっていうのは実感してたんです。
だから年輪の比喩で中心に自分の中の幼児がいてね、
外側が現在の自分だって考えるほうが、
ぴったりするっていうふうに、だんだんなったんです。
けっこうこの年輪の比喩には「ああ、なるほど」って
言ってくれる人が多いですね。

伴田

僕もそう思います。しっくりきます。
インドに行かれたり、
昨年末にはニューヨークにも行かれたり本当にお元気ですね。

谷川

僕は10年くらい前からうちの息子世代の音楽家と
ツアーに出たりしてるもんですから、
自分がダウンしちゃうと人に迷惑かけるから、
少し自分の体に気をつけるようになったんですね。

伴田

何かやってらっしゃるんでしょうか?

谷川

それで「呼吸法」っていうのをやってる。
それがけっこういいような気がしますね。

伴田

それはどういうものなんですか?

谷川

もう単純。まず吐く息が大事であると。
吐いてから吸うというのが基本になってきますね。

伴田

吐くのが先だと。

谷川

はい。吸ってから吐くのではないんです。吐ききってから吸うんです。
ヨガでも呼吸が基本だって言いますよね。呼吸で自分の気持ちを静めて、
「丹田に気を下ろす」って言い方するんですけどね。
そうすると、頭も静かになっていくっていう。
そういうことをなんとなく毎朝やってるんですけどね。

伴田

呼吸は身体のパズルみたいなものですね。

谷川

あと僕、わりとよく眠れるたちなんですよ。
それとだいたい寝たら、目覚めないですね、夜中とか。
だから6、7時間は必ず寝ちゃって。
眠れない人に言うと、みんなすごく怒ります(笑)。

伴田

音楽といえば、今日楽器を持ってきたんです。
子どもたちに見せて「これは何でしょう?」って言うと、
最初はみんな何だかわからない。
叩いて音が出るとびっくりするんです。
それが楽しくて結構持ち歩いています。



谷川

似たようなの見たことあります。これは既製品?
それとも自分で?

伴田

自分で作りました。下手ですけど、何でも自分で作るのが好きなんです。
スリットドラムなんですが、ぼくはバードドラムと呼んでいます。

谷川

あ、けっこう重い。

伴田

中は空洞なんですけどね。

谷川

6つの音が出るんですね。

伴田

ええ。手作りで調律は無理なので、全部違う音なんです。
それを逆手にとって、世界で一台の自分だけの楽器になるといっています。

谷川

アフリカのカリンバなんかでも、あれ1個1個違いますもんね。

伴田

そうですね。キツツキが木や家をコンコンコンってくちばしでやると
音が出るじゃないですか。
あれと基本的に同じ原理なんですよね。この楽器は。

谷川

なるほどね。
群馬県の家はキツツキの被害がたいへんなんです。
つつく音がまたおもしろいもんだからね。

伴田

穴があいちゃうんですか?

谷川

簡単にあいちゃいますね。家の壁にボコボコ穴があいちゃって。
この楽器の穴(スリット)はノコギリで?

伴田

ええ、電動の糸ノコであけます。
できあがると木のカスが穴の中にいっぱい入ってるんですよね。
だからこうやってぽんぽん叩いてカスを出して。

谷川

え? 先に箱ができちゃって、それから穴を切るんですか? 

伴田

いえ切れ目(スリット)は先に切っておきますが、
組み立てたあとで、切り口をヤスリで磨くんです。すると
細かいカスが出るんですよ。
それが中に入っちゃって、うっかりそのまま演奏していると
中からカスが煙みたいに出てくるんです(笑)。

谷川

じゃあ七色の粉を入れておいて、
演奏すると七色の粉がボワーって出てくるとか(笑)。

伴田

幻想的ですね(笑)。
実は谷川さんに、これ、さしあげようと思って持って来たんです。

谷川

ほんとにいいんですか。ありがとうございます。
詩を読むときなんかにも使えそうですね。 



伴田

ぜひ使ってください。
すっかりはまってしまって、
大きいものだとテーブルくらいあるものも作りました。
中に人が入れるくらいの大きさです。
大きいのを見せて「さてこれは何でしょう?」ってパズルみたいに
いうと、みなさんきょとんとします(笑)。
マレット(ばち)を見せるとすぐわかるんですけどね。

谷川

中に入って叩いてもらうと、癒されるみたいな(笑)。

伴田

生き返るとか(笑)。

対談をおえて

バレンタインデーの午後に谷川さんの自宅で行われた対談は、
おっぱいの話から絵本の話、教科書の話、
そしていつのまにか楽器の話にまで及び、
演奏まで見ることができた。
もの心ついたころからのいちファンとしても、
なんとも幸福な時間だった。ありがとうございました!

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その4   インドと年輪と、楽器の話   2011.04.28 UP!

谷川俊太郎(たにかわ・しゅんたろう)

1931年、東京生まれ。詩人。1952年、詩集『二十億光年の孤独』でデビュー。以後、脚本、写真、映画などさまざまな分野で活躍。1962年『月火水木金土日のうた』で日本レコード大賞作詞賞、1975年『マザー・グースのうた』で日本翻訳文化賞、1982年『日々の地図』で読売文学賞、ほか受賞・著書多数。