• 不惑突入の噺家・春風亭一之輔です。落語界ではまだまだ若手。写真家のキッチンミノルに「孔子いわく『四〇にして惑わず』だそうです。師匠も不惑だから人生相談をしてみませんか?」って言われて、流れで「いいよ」と応えてはみたものの……正直、相談にのって欲しいのはこっち。あまり頼られても困るので、とりあえず「話だけは聴きます」。


第5回 『落ち込んでしまうと、なかなか浮上できません』

 

「謎の新企画発表会」スペシャル-PART2

前回に引き続き、連載立ち上げ時に行われたイベントの模様をお伝えします。

 

▲「謎の新企画発表会」の様子。前半は『師いわく』が生まれる現場をお目にかける公開トークでした。

 

 4月5日19時。小学館本社にて新連載企画発表会がスタートした。和服姿の一之輔師匠。写真は撮らないのにカメラをぶら下げたキッチンミノル。いつもはヨレヨレのTシャツの高成さんもジャケットを羽織っている。拍手の中で現れた3人は揃って刈りたて剃りたての坊主頭であった……。

 

キッチンミノル(以後、キ)本日はたくさんのご来場ありがとうございます。この会を主催する【小学館カルチャーライブ!】のホームページには「プラチナチケット必至」と書いてありましたけれども、みなさんは、何でこの会を知って、いらしていただいたんでしょうか。あまり宣伝はしてなかったみたいなのですが?

 

一之輔師匠(以後、師)なにが“プラチナチケット”だよ!

 

キ:いやいや、ホームページやツイッターとかにそう書いてありましたけど?

 

師:二週間前くらい前に小学館の高成さんから連絡が来てさ、「一之輔師匠、リツイートしてもらえませんか」って言われてさ。

 

キ:リツイートしたんですか?

 

師:したよッ! 「プラチナチケットですよ」っていうツイートを自分でリツイートしてさ。 こんな屈辱的なことってある? プラチナチケット売り切れ必至っていう情報をまさかの本人が、イベント直前に宣伝して…

 

キ:拡散する、という。 

でもその効果もあって、お客さんがこんなに集まってくださっています。

 

師:ありがたいね。……まっ、今日はそんな会です。騙されたと思って、どうぞお付き合いください。 だけど“謎の新企画”発表って、ちょっと…

 

キ:煽りすぎですよね。

 

師:誰も知らないんだから、「謎」に決まってんじゃん!

 

編集の高成さん(以後、タ):…………(舞台の隅で困惑を隠せない)

 

師:そうそう、あのねェー!!

 

キ:はい?

 

師:一言、言っていいですか。

 

キ:いきなりですね。どうぞ。

 

師:小学館の男子トイレのことですよ!

 

キ:え? ビル全体が建て替えられたばかりで、トイレの中もキレイだったじゃないですか。

 

師:言いたいのは小便器のこと。イマドキのおしゃれな形なんだか知らないけれど、浅すぎるんですよ朝顔が! 横から丸見えなの。全然隠せないんだから。イチモツに自信のある人しか使えない! どうなんですか高成さん? 上のエライ人に言っておいてくださいよ!

 

タ:……えーと。一応、「話だけは聴きます」。

 

師:くそ〜…

 

 

 

師に問う:
落ちこんだり悩んだとき、誰にも言えずに「ごっくん」してしまうことが多く、なかなか浮上できません。師匠が落ちこんだり悩んだりしたときの浮上法があれば教えてください。

……師匠の「命まで取られる訳じゃあるまいし」という言葉を励みにしていますが、人間できてなくて、なかなか浮上できません。(匿名/女性)

 

 

 

キ:師匠は落ちこむことってあるんですか?

 

師:うーーーーーん。……あるよ。

 

キ:だいぶ考えましたね。

 

師:あると思う。

 

キ:例えば、どんなときですか?

 

師:前座の時期にね。師匠や先輩に怒られたりしたときは落ちこんだね。こう見えても打たれ弱いんで、怒られるのが苦手なんですね。

この前も誰かになんか怒られたなぁ……誰に何を怒られたかは忘れちゃったけど。とにかく怒られた。

 

キ:打たれ強いじゃないですか! もう忘れちゃってんなら。だいぶ強いですよ。

 

師:あのね、忘れやすいんですよ。“グーン!”って一気に凹むんですよ。5分くらい。

 

キ:5分くらい!?

 

師:それで、また“ビューン!”って元に戻るんです。桂花とか天一なんか食うと、すぐに忘れちゃう。味が濃くてカロリーの高いモン食うとね。

※桂花…熊本発祥のラーメン店。豚骨鶏ガラスープ。新宿末廣亭や池袋演芸場から徒歩1分にも店舗あり。

※天一…京都発祥のラーメン店、「天下一品」。鶏ガラこってりスープ。上野の鈴本演芸場から徒歩2分にも店舗あり。また師の母校、日本大学芸術学部のキャンパスがある江古田にも。

 

キ:そっちに持ってかれちゃうんだ。

 

師:そうそう。

だけどさ、悩みを打ち明けられる人ってなかなかいないよね。親であろうと奥さんであろうと、本当の悩みなんてそうそう打ち明けられない。

 

キ:そうですね。友達なんかにもねぇ……

 

師:逆を言えば、打ち明けられる相手がいる人は幸せなんだと思うよ。

 

キ:人にはなかなか甘えられないですもんね。

 

師:そう、甘えられない。 ……どうせ他人には甘えられないんだから、いっそのこと自分に甘えたらどうだろう?

 

キ:自分に!?

 

師:そう。自分「パパ」みたいなのを作ってさ。

 

キ:……微分パパ? 

 

師:なんだよ、それ? 自分「パパ」ね。例えば、

「(低音の良い声で)いいんだよ〜、お前カワイイよ〜、お寿司食べな、大トロも食べな〜、魚卵もいいぞ〜」

……なんて、優しいパパのことばを頭の中で想像してさ。お寿司とかたくさん食べたらいいんですよ。

 

キ:はぁ。

 

師:自分にご褒美みたいな感じで。カロリー高いもの食べてさ。 別に食事じゃなくてもいいと思いますよ。自分の欲求に、正直に従う……3時間くらい。

 

キ:自分の欲求に……

 

師:つまり

 

自分が自分の「パパ」になってしまえばいいんだよ。

 

津川雅彦みたいな「パパ」を自分の中に作るんですよ。自分を甘やかしてくれる「パパ」を。お金がありそうで、力がありそうで、なおかつスケベそうな人をね。

 

キ:そんなことやったら、会計の段になってびっくりするかもしれないですけど……

 

師:大事なんじゃないんですか。「金で解決する」ってことも。

 

キ:金で。

 

師:「金がない」って言われちゃうと、それまでなんだけどね。

 

キ:それじゃあ、もし相談者が男性だったらどうなるんですか?

 

師:それなら朝丘雪路みたいな自分「ママ」を……

 

キ:ご夫婦!

 

師:それじゃ、ただの津川家の子どもか。

 

キ:……ところで、3時間限定にする理由はあるんですか?

 

師:それ以上「パパ」やっちゃうと単純に欲望に溺れていくだけでしょ。そこはきっちり最初に「3時間まで」と決めておかないと。

 

キ:そりゃそうですよね。

 

師:いつまでも「パパ」に頼ってたら、さすがに自分の中の津川さんも「いい加減にしろ!」って言うと思うよ。津川さんだってさ、オモチャ売るのに忙しいんだから。

※オモチャ売る…津川雅彦氏は、玩具小売会社グランパパの創業者で、現在は名誉顧問をされています。

 

 

 

師いわく:


 

(写真・構成/キッチンミノル)※複製・転載を禁じます。

 

コメントは受け付けていません。