• 「ローマ法大全」まで読破して「ナポレオン法典」を制定した
    ナポレオン・ボナパルトは、
    流刑の船中でも勉強していたという。
    盲目の国学者・塙保己一(はなわ・ほきいち)は、音読してもらった6万冊の本を記憶し、
    死ぬ間際まで『群書類従(ぐんしょるいじゅう)』や『史料』の編纂にあたった。
    こうした学ぶ意欲はどこから出てくるのか。
    どうすれば意欲を持てるのか。
    先進国のなかで学習意欲がきわめて低いといわれる
    日本の社会人、学生たちに向けて、「学ぶことの大切さ」を
    企業経営者から学長に転身した“哲人経営者”が語る。


第3回 データで見る「低学歴の国」日本

        

 

■「日本人は勤勉だ」といわれるけれど……

 日本人は勤勉だといわれていますね。与えられた課題を、ときには時間を大幅に超過してでも仕上げ、しかもできあがった仕事のクオリティが高い、というわけです。いま問題になっている長時間労働は、勤勉さと裏腹の関係にあり、「好きで長時間働いているだけなのに、その何が悪いんだ?」と開き直る人も少なくありません。
 でも、それは事実でしょうか。ちょっと数字で確認してみましょう。
 OECD(経済協力開発機構)の統計によると、加盟36ヵ国(2018年5月にリトアニアが加盟しました)+2ヵ国(コスタリカ、ロシア)の38ヵ国中、日本の労働時間は22位で1713時間でした(2016年)。この数字は、アメリカ(1783時間)よりも少なく、OECD平均(1763時間)と比べても短いという結果になっています。日本人の労働時間は、海外と比べて多すぎる、というほどではないのです。

 

 

 ただ、それは見かけ上の話にすぎません。この数字には、非正規雇用者も含まれているからです。厚生労働省が公表している「毎月勤労統計調査」の2017年分結果確報によると、事業所規模5人以上の勤務先で働く「一般労働者」(正社員)の月間平均労働時間は168.8時間、「パートタイム労働者」は同じく86.1時間です。この数字に12を掛けて年間の労働時間を計算してみると、前者はおよそ2026時間、後者は1033時間になります。
 他のさまざまな統計からも、日本人の正社員たちは、年間2000時間以上労働していることは明らかです。
 それで成果があがっていればいいのですが、経済成長率が先進国で最低レベルなのはご存知のとおりです。OECDは2018年3月に経済見通しを上方修正し、日本のGDP成長率を2017年1.7%(実績)、2018年1.5%(予測)、2019年1.1%(予測)と0.3~0.1%引き上げました。それ自体は喜ばしいことなのですが、アメリカ、ユーロ圏、中国と比べると、かなり見劣りがします。
 IMFの「世界経済見通し」でも、日本の経済成長率の低さは際立っています。

 

 

「勤勉」を辞書で引くと、「仕事や勉強に一心にはげむこと」(広辞苑)とあります。労働時間が長くて成果(成長率)があがっていないのに、「勤勉」だといえるのでしょうか。もっとシンプルに労働生産性をみると、日本はずっとG7で最下位なのです。

 

 

 2018年2月に、エデルマン・トラスト・バロメーター(※)が発表されました。その結果で面白いのが、「あなたがどの程度その組織や機関を信頼しているか」という質問に対する答えです。
 調査対象となっている主要28ヵ国平均では、72%の人が「信頼している」と回答しています。つまり、100人の社員がいたら72人が自分の会社を信頼しているということですね。しかし、日本は57%しか信頼している人がいません。これは韓国と同率で最下位です。
 じつはこれでも会社への信頼度は回復しているのです。2015年は40%、2016年は41%……と半数以下しか「信頼している」と答えた人がいませんでした。それにしても、世界で最下位というのは恥ずかしいかぎりです。
 さて、この結果からいえることは、「日本人は会社に対するロイヤリティが低い」ということです。会社や組織に逆らうと、誰もが満足するようなことにはならないので、みんなが空気を読んで社風に合わせているけれど、心の中ではあまり信頼していない──。エデルマンのデータは、そういっているのです。
「日本人は勤勉だ」といわれているのはあくまでも見かけだけの話で、じつは日本人は面従腹背が非常にうまい人々だと見ることもできるのです。

 

※「エデルマン」とは
世界最大級の独立系PR会社。世界28ヵ国、3万人名以上(2018年実績)のオピニオン・リーダーに対して「トラスト・バロメーター」という調査を行っている。

 

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