受賞作ならびに受賞者 小学館文庫小説賞 【正賞】記念品 【副賞】百万円 『ハガキ職人カタギ!』 風 カオル(大分県、三十二歳)

受賞の言葉

風 カオル(かぜ・かおる)

一九八一年、大分県生まれ。別府短期大学大分キャンパス部生活文化学科卒業後、市立図書館の臨時職員として勤務。その後は、大分県臨時職員、古書店アルバイトを経て、現在は百円ショップのパートタイムの仕事に就きながら、執筆活動に励んでいる。大分県大分市在住。


月並みではありますが、予想外の受賞でした。
最終選考に残ったものの、この作品が選考委員の間で評価がまっぷたつに分かれているとお聞きし、さもありなんと思ったのも束の間。数日後、家で干し梅を食べていたらまさかの受賞の一報が届きました。動揺し、電話を持ったまま部屋の中をうろうろ歩きました。傍から見ると禹歩を行う陰陽師のようだったと思います。あと、もう少しおしゃれな食べ物を口にしていたかったものです。マカロンとか。
今回はハガキ職人という、今まであまり題材にされていない人々の話を書かせていただきました。私自身はラジオ番組にハガキを送ったことはなく、すべて深夜ラジオを聴いていて膨らんだ空想です。突拍子のないネタを作る人は、きっと普段は真面目で不器用な方々なのだろうと思い、そんな人の物語が書きたくなりました。
昔から、笑いを扱う人へ一種の憧れを抱いています。ハガキ職人、芸人、ギャグ漫画家。どんなに頭を悩ませて快心のネタを作り上げても芸術作品とは呼ばれない。だからこそ素晴らしい。私がこれから書いていきたいものも、まさにそういった物語です。
高尚な芸術品は美しいけれど、そればかりでは肩が凝る。もっとくだけた、取っつきやすいものが書けたなら、一人でも多くの方が単純に楽しんで下さったなら、こんなに嬉しいことはありません。
最後になりましたが、選んでいただいた編集者の皆様。家族。友人。ネット上で趣味を介して知り合った方。疎遠になった方。いつも面白い番組を届けてくださるラジオ関係者の皆様と、すべてのハガキ職人さんへ。心より感謝します。

選考経過

第十五回小学館文庫小説賞は二〇一二年十月から二〇一三年九月末日まで募集され、六百二十六篇のご応募をいただきました。
選考は応募作の中から候補作を絞り込む一次選考、候補作の中から最終候補作を選ぶ二次選考、そして小学館文庫小説賞受賞作を決定する最終選考の三段階を経て行われました。

一次選考を通過したのは以下の十五篇です。

『威風堂々』桂歌蔵/『竿斬りの舞』中谷睦/『秘密の姫ちゃん』仁草 哉/『ダブルチェイス』馬頭 晶/『この星を愛してる』城 宣彦/『青い瓶の茶色い薬』榊 孝/『ワッカ・ドライブ・七竈』出村セイ子/『人追うもの』麻里信乃/『天使の悪戯──三浦家の波乱万丈な冬』菊池藤子/『ハガキ職人カタギ!』風 カオル/『羽と不朽の花と、あと田中』岩城智英/『シンギュラリティ』佐藤美博/『シャダイの小枝』遍 史/『ターンフェイス』長谷弌路/『山幸屋お凛花暦事件帳』山口かな子(応募受付順)

一次選考を通過した十五篇の作品について、小学館出版局文芸編集部の全編集部員による二次選考を行い、文章力、テーマ、独創性、書き手としての将来性、読者への満足度などの観点から詳細に検討し、次の四篇が最終選考の対象となる候補作として選出されました。

☆第十五回小学館文庫小説賞最終候補作

『秘密の姫ちゃん』仁草哉 (群馬県・三十三歳)
『天使の悪戯──三浦家の波乱万丈な冬』菊池藤子 (神奈川県・三十六歳)
『ハガキ職人カタギ!』風カオル (大分県・三十二歳)
『人追物』麻里信乃 (京都府・三十七歳)

(年齢は応募時)
上記の四作について、小学館出版局文芸の全編集部員による最終選考会を開き、さらに議論を重ねた結果、風カオルさんの『ハガキ職人カタギ!』を第十五回小学館文庫小説賞受賞作に選出しました。
風カオルさんには記念品と副賞百万円を贈り、受賞作は近日中に小学館より刊行いたします。

各作品の選評はこちら

小学館文庫小説賞 受賞作一覧

第一回  『感染〜infection〜』 仙川 環 (佳作)『神隠し』 竹内 大 (佳作)『枯れてたまるか探偵団』 岡田斎志
第二回  『秋の金魚』 河治和香 (佳作)『if』 知念里佳
第三回  『テロリストが夢見た桜』 大石直紀
第四回  『ベイビーシャワー』 山田あかね (佳作)『キリハラキリコ』 紺野キリフキ
第五回  『リアル・ヴィジョン』 山形由純
第六回  『あなたへ』 河崎愛美
第七回   受賞作なし
第八回  『パークチルドレン』 石野文香 『廓の与右衛門 控え帳』 中嶋 隆
第九回  『千の花になって』 斉木香津 (優秀賞)『ある意味、ホームレスみたいなものですが、なにか?』 藤井建司
     (佳作)『秘密の花園』 泉スージー
第十回  『神様のカルテ』 夏川草介
第十一回 『恋の手本となりにけり』 永井紗耶子
第十二回 『マンゴスチンの恋人』 遠野りりこ (優秀賞)『時計塔のある町』 古賀千冬
第十三回 『薔薇とビスケット』 桐衣朝子
第十四回 『ドランク チェンジ』 八坂堂 蓮
第十五回 『ハガキ職人カタギ!』 風 カオル

第一回受賞作 『感染〜infection〜』 仙川環
第四回受賞作 『ベイビーシャワー』 山田あかね
第十回受賞作 『神様のカルテ』 夏川草介
第十三回受賞作 『薔薇とビスケット』(『ガラシャ夫人のお手玉』改題) 桐衣朝子