受賞作ならびに受賞者 小学館文庫小説賞 【正賞】記念品 【副賞】百万円 『ヒトリコ』 額賀 澪(大分県、三十二歳)

受賞の言葉

額賀 澪(ぬかが・みお)

一九九〇年、茨城県行方郡麻生町( 現・行方市)に生まれる。十歳のとき、初めての小説を書く。高校卒業後、小説家を目指して日本大学芸術学部文芸学科 へ入学。創作やDTPを学ぶ。大学卒業後は広告代理店で制作として勤務しながら創作を続けている。


私の母校は、文芸や絵画や写真や音楽や映画など、創作を志す若者が集まる場所でした。 物書きを志す多くの仲間を得ることができましたし、恩師との出会いもありました。何より、小説を書くことを咎める人がいない。大学四年間は、そんな環境の中でただひたすら書き続けておりました。今回、小学館文庫小説賞をいただいた「ヒトリコ」は、大学の卒業制作で書いた作品がもととなっています。第一章を書き始めたのは、大学四年の秋頃。卒業まで半年を切り、それでもまだのらりくらりと就職活動をしていました。
 私の通っていた中学校は合唱に非常に力を入れているところでした。音楽の授業も、ほとんどが合唱だったと記憶しています。クラスみんなで力を合わせて何かをする、ということがあまり好きになれなかった生意気な中学生でしたが、今でも好きな、むしろ今だからこそ好きな合唱曲は数多くあります。その中の一つである「怪獣のバラード」を、今回は物語のモチーフとさせていただきました。大学四年間の集大成であり、思い出深い作品であります。
 まだまだ拙く荒削りな「ヒトリコ」を読み、そして選んでくださった編集者の皆様。ゼミで二年間お世話になり、私に「茨城を舞台に小説を書け」と言ってくださった夫馬基彦先生。私の書くものを大変評価してくださいました近藤洋太先生。度々チャンスをくださいました谷村順一先生。中村先生、大和田先生、此経先生、上田先生、佐藤先生、多岐先生。母校の教職員の皆様。一緒に野望を語らった友人。同じゼミに所属していた皆さん。一緒に実習誌を作った皆さん。「とりあえず文章が書けます」というただ一つの武器を振り回して採用試験に挑んだ小娘を採ってくださった会社の皆様。そして家族。心より、お礼申し上げます。これからもどうぞよろしくお願い致します。

選考経過

第十六回小学館文庫小説賞は二〇一三年十月から二〇一四年九月末日まで募集され、四百九十八篇のご応募をいただきました。
選考は応募作の中から候補作を絞り込む一次選考、候補作の中から最終候補作を選ぶ二次選考、そして小学館文庫小説賞受賞作を決定する最終選考の三段階を経て行われました。

一次選考を通過したのは以下の十五篇です。

『リストラクション・ゲーム〜回生』山下俊樹/『卯の花が咲く頃』知野みさき/『柊の門』悠木れい/『東京アンデッド』中山茂太/『黒女神の条件』城山真一/『誰そ彼』西村昇/『ヒトリコと』額賀澪/『イミテエション』千川由里子/『夏隣』餐青/『BLUE EYE』藤堂ラモン/『花とつぼみ よしわら純情』春水佳奈/『お父さんといっしょ〜骨のない私と骨だけの父』東野みゆき/『君と夏が、鉄塔の上』賽助/『すべり台と青いラムネ』小津あんじ/『出戻りお岩と世巡り伊右衛門』駒木根雅信(応募受付順)

一次選考を通過した十五篇の作品について、小学館出版局文芸編集部の全編集部員による二次選考を行い、文章力、テーマ、独創性、書き手としての将来性、読者への満足度などの観点から詳細に検討し、次の四篇が最終選考の対象となる候補作として選出されました。

☆第十六回小学館文庫小説賞最終候補作

『柊の門』悠木れい (東京都・五十五歳)
『黒女神の条件』城山真一 (石川県・四十二歳)
『ヒトリコと』額賀澪 (東京都・二十三歳)
『君と夏が、鉄塔の上』賽助 (埼玉県・三十五歳)

(年齢は応募時)
上記の四作について、小学館出版局文芸の全編集部員による最終選考会を開き、さらに議論を重ねた結果、額賀澪さんの『ヒトリコ』(『ヒトリコと』改題)を第十六回小学館文庫小説賞受賞作に選出しました。
額賀澪さんには記念品と副賞百万円を贈り、受賞作は近日中に小学館より刊行いたします。
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小学館文庫小説賞 受賞作一覧

第一回  『感染〜infection〜』 仙川 環 (佳作)『神隠し』 竹内 大 (佳作)『枯れてたまるか探偵団』 岡田斎志
第二回  『秋の金魚』 河治和香 (佳作)『if』 知念里佳
第三回  『テロリストが夢見た桜』 大石直紀
第四回  『ベイビーシャワー』 山田あかね (佳作)『キリハラキリコ』 紺野キリフキ
第五回  『リアル・ヴィジョン』 山形由純
第六回  『あなたへ』 河崎愛美
第七回   受賞作なし
第八回  『パークチルドレン』 石野文香 『廓の与右衛門 控え帳』 中嶋 隆
第九回  『踏んでもいい女』(『千の花になって』改題) 斉木香津 (優秀賞)『ある意味、ホームレスみたいなものですが、なにか?』 藤井建司
     (佳作)『秘密の花園』 泉スージー
第十回  『神様のカルテ』 夏川草介
第十一回 『部屋住み遠山金四郎 絡繰り心中』(『恋の手本となりにけり』改題) 永井紗耶子
第十二回 『マンゴスチンの恋人』 遠野りりこ (優秀賞)『時計塔のある町』 古賀千冬
第十三回 『薔薇とビスケット』 桐衣朝子
第十四回 『ドランク チェンジ』 八坂堂 蓮
第十五回 『ハガキ職人タカギ!』(『ハガキ職人カタギ!』改題) 風 カオル

第一回受賞作 『感染〜infection〜』 仙川環
第九回受賞作 『踏んでもいい女』(『千の花になって』改題) 斉木香津
第十回受賞作 『神様のカルテ』 夏川草介
第十五回受賞作 『ハガキ職人タカギ!』(『ハガキ職人カタギ!』改題) 風カオル