インタビュー

大江戸恐龍伝の

魅力を著者に聞く
其の壱『博物学フィクション可能性』 其の弐『源内の屈折』
其の参『恐龍への興味』 其の四『フィクションとフィクションをつなぐ史実 』

其の壱『博物学フィクション可能性』

 夢枕獏さんは、SF小説の作家として創作活動を開始した。しかし、『陰陽師』にしても、今回の『大江戸恐龍伝』にしても、最近の作品は既存のSF小説の範疇には入れにくい。
 SFはサイエンス・フィクションの名の通り近代科学知識をベースにした空想小説だが、近年の夢枕作品は、近代科学以前の科学を中心に、魔術、呪術といった宗教あるいは疑似科学=オカルトまで編み込まれていく。また、古い時代を舞台にするからといっても、いわゆる歴史小説とも趣が異なる。
「博物学です。僕は科学という響きより博物学という響きのほうが好きなんです。近代以前には現代の科学に代わる学問として宗教、魔術、呪術がありました。そして中世から近代に移り変わろうとするとき、本草学から博物学が生まれました。科学に移っていく過渡期の科学が博物学で、博物学はひと時代前の魔術、呪術の分野も守備範囲にしているのです。科学は近代以降、細分化、専門化してつまらなくなりました。博物学はたとえば伝説上の動物である龍も実在するだろうと考えて研究分野に組み込んでいました。そういうところから、行動力と創造力とを総動員して、地球像、宇宙像を描こうとする傑物が出現するのですね。博物学と博物学者の魅力は、空想小説を創作する大いなる力になるのです」と本人はいう。
 不確かな伝説さえも実在するものとしたなら、当時のおびただしい数の博物誌は、みなフィクションの要素を持っていることになる。では、そうした古文献を渉猟しながら創作される夢枕作品は、フィクションをさらにフィクション化するものにほかならない。博物学フィクション……。獏さんが拓いた新境地をSFに対抗して仮にそう名づけよう。二重のフィクションで構成されるその世界は、科学の進歩とともに失われつつある人間の想像力を 蘇らせる力があるようだ。
 それにしても、今回の『大江戸恐龍伝』の舞台は江戸時代であり、主人公は平賀源内である。そうした舞台設定の心はいかに。自らに宿った才気を持てあましながら、時に果敢に行動し、時に浮かばれぬ身の上に落ち込む魅力的な主人公として描かれる平賀源内に惹かれた理由とは?


其の壱『博物学フィクション可能性』 其の弐『源内の屈折』
其の参『恐龍への興味』 其の四『フィクションとフィクションをつなぐ史実 』
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