小学館のWEB図鑑Z「日本の魚とはどのようなものか」 〜The Natural History of the Fishes of Japan〜 編・監修/中坊徹次(京都大学名誉教授) 写真/松沢陽士ほか
知っているようで、じつは知らない事の多い魚の世界。
このWEB図鑑では、知られざる魚の姿や生態を、
撮り下ろしのスペシャルフォトと、研究者が書いた最新の解説文で徹底紹介します。
魚に関する、とっておきの蘊蓄が身につきます。
  • 第14回
  • 2017年2月更新
ゴンべ科、タカノハダイ科〜岩礁やサンゴ礁にすむ名脇役たち〜
イソゴンベ・オキゴンベ・クダゴンベ
タカノハダイ・ミギマキなど
比較的暖かい岩礁、サンゴ礁に見られるゴンべ科、そして岩礁に見られるタカノハダイ科のなかま達。あまり注目されることのない、比較的地味なグループの魚たちです。しかし、観賞魚として人気のクダゴンベ、冬に意外とおいしいタカノハダイなど、おのおのが持ち味をもっているのです。
ゴンベ科 Cirrhitidae

背鰭棘は10本で、先端に1〜数本の糸状突起が付属する。胸鰭軟条は14本で、下部の5〜7軟条は不分枝で伸長して太くなる。普通は体長30cm以下の小型種、大きいもので55cm。インド−太平洋を中心に、西大西洋と東大西洋の熱帯域に12属35種、日本に8属14種。

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※TL…全長
イソゴンベ(イソゴンベ属) Cirrhitus pinnulatus (Forster, 1801)

頭部は大きく丸みを帯びる。体は褐色で、白色斑と暗色小点が散在する。岩礁やサンゴ礁の外縁の波あたりの強い場所に生息。伊豆−小笠原諸島、伊豆半島〜琉球列島(散発的)、台湾、西沙群島、インド−太平洋に分布。

オキゴンベ(オキゴンベ属) Cirrhitichthys aureus (Temminck and Schlegel, 1843)

体は高く体高は体長の43%以上。体色は黄色〜橙色で、幼魚では一様に黄色。体側に暗色の不規則な斑紋がある。岩礁やサンゴ群落に生息し、水深10〜40mのウミトサカ類やカイメン類などの周辺でよく見られる。雌性先熟の性転換をする。千葉県館山〜屋久島の太平洋沿岸、済州島、台湾、中国南シナ海沿岸、フィリピン諸島、バリ島に分布。

サラサゴンベ(オキゴンベ属) Cirrhitichthys falco Randall, 1963

体は白色で、赤〜褐色の数本の鞍掛け状の斑紋と多数の小斑があり、眼下に2本の褐色縦線がある。造礁サンゴの群体上に生息。房総半島〜屋久島の太平洋沿岸(散発的)、琉球列島、西太平洋、南アフリカに分布。

ヒメゴンベ(オキゴンベ属) Cirrhitichthys oxycephalus (Bleeker, 1855)

体は白〜淡赤色で、大小の赤〜褐色の楕円斑が散在する。潮通しの良いサンゴ礁の外縁に生息。伊豆半島〜土佐湾の太平洋沿岸(散発的)、小笠原諸島、琉球列島、台湾、インド−太平洋、カリフォルニア湾に分布。

メガネゴンベ(ホシゴンベ属) Paracirrhites arcatus (Cuvier, 1829)

体は赤褐〜淡褐色で、眼の周囲に黄色の環状の斑紋と、体側から尾鰭にかけて1本の白色縦帯がある。造礁サンゴの群体上に生息。伊豆−小笠原諸島、和歌山県田辺湾〜屋久島の太平洋沿岸(散発的)、琉球列島、台湾、南沙群島、西沙群島、インド−太平洋に分布。

ホシゴンベ(ホシゴンベ属) Paracirrhites forsteri (Schneider, 1801)

体の色と斑紋は変異が多く、背鰭基部と体側の白色縦帯の有無も個体差がある。ただし、いずれの個体も頭部には赤〜褐色小点が散在する。造礁サンゴの群体上に生息。伊豆−小笠原諸島、和歌山県田辺〜沖縄諸島(散発的)、インド−太平洋に分布。

クダゴンベ(クダゴンベ属) Oxycirrhites typus Bleeker, 1857

体高は低く、吻が著しく突出する。体側には赤い格子状の斑紋がある。水深10〜数10mのヤギ類やウミトサカ類の群体上に生息。房総半島〜琉球列島(散発的)、伊豆−小笠原諸島、インド−太平洋に分布。

ウイゴンベ(ウイゴンベ属) Cyprinocirrhites polyactis (Bleeker, 1874)

体高は高く、尾鰭は深く2叉。体色は橙〜赤桃色で、背鰭や尾鰭は黄色を帯びる。水深10〜130mの岩礁やサンゴ礁の崖地に生息し、遊泳性が強い。房総半島〜琉球列島(散発的)、台湾、インド−太平洋に分布。

タカノハダイ科 Cheilodactylidae

口唇は肥厚する。背鰭棘数は14〜22。胸鰭軟条は下部の4〜7本が分枝せず、伸長して太い。普通体長40cm、大きいもので体長1.2m。南半球は太平洋・インド洋・大西洋の温帯域、北半球は東アジアの温帯域とハワイ諸島に4属27種、日本に1属3種。

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タカノハダイ(タカノハダイ属) Goniistius zonatus (Cuvier, 1830)

体は青灰色で8〜9本の褐色斜帯、尾鰭に白色の小円斑が散在する。浅い岩礁の藻場に生息。津軽海峡〜屋久島の太平洋沿岸、津軽海峡〜九州南岸の日本海・東シナ海沿岸、瀬戸内海、朝鮮半島南岸、台湾、香港に分布。冬に煮付で美味。

ミギマキ(タカノハダイ属) Goniistius zebra (Döderlein, 1883)

体は白〜淡黄色で、8〜9本の黒色斜帯がある。吻部に黒色斜帯がある。口唇は赤く、尾鰭は下葉が黒色。タカノハダイよりやや深い岩礁に生息する。房総半島〜屋久島の太平洋沿岸、奄美大島、新潟県〜山口県の日本海沿岸(散発的)、台湾に分布。

ユウダチタカノハ(タカノハダイ属) Goniistius quadricornis (Günther, 1860)

ミギマキに似るが、口唇は赤くならず、吻部に黒色斜帯がない。岩礁やその周辺の砂地に生息。新潟県〜九州南岸の日本海・東シナ海沿岸、房総半島〜屋久島の太平洋沿岸、瀬戸内海、朝鮮半島南岸、台湾、中国南シナ海沿岸に分布。

萩原清司(横須賀市自然・人文博物館)
編集長の一口コラム

「冬のタカノハダイはうまい。」前回のノトイスズミ同様、このような情報をいただきました。タカノハダイ…夏の盛りに磯遊びでつかまえ、刺身で食べたことがありますが、身の磯臭さに閉口した記憶があります。「冬とはいえ、本当においしいの??」しかし前回同じ様に教えて頂いたノトイスズミは、素晴らしかったからなあ…と、疑心暗鬼ではありましたが、さっそくタカノハダイを探しに再び市場に足を運びました。ノトイスズミは入手まで3か月もかかってしまいましたが…。魚の入手に苦戦するかと思いきや、今回は1日で見事にゲット。築地市場の場外に新しくできた「築地魚河岸」内に店舗を構える丸集さんで、全長37pほどの見事なタカノハダイを買うことができました。これは幸先がいいぞ!
家に持ち帰り、少し観察。体側に走る斜線がタカの羽の模様に似ていることから「鷹羽鯛」と呼ばれているようです。よく見ると、眼と唇の上に瘤のような硬い突起。これは成長すると出てくるのかしら。そして唇は分厚く、意外と特徴的な顔立ちです。尾鰭の水玉模様も、なかなか美しい。SNSにアップしたら、読者の方に、さっそく「とてもきれいな魚ですね」と感想をいただきました。
そして、いよいよ調理。まずは鱗を落とす。予想に反して鱗は硬く、ウロコ取りを使ってもかなりの力を要しました。結構疲れた…。
身は半透明の美しい白身で、臭みはまったくなく、嬉しい予感がしてまいりました。経験上、見た目の美しい身をもつ魚はうまい、と信じているのであります。刺身にして食べますと、むむむ…むちむちと歯をおし返す弾力感。そしてその直後に内側から鼻孔をくすぐる甘い香り。じつにほのかで上品な脂が乗っております。これはヒラメか!? すばらしい! 想定以上のうまさです。いろいろな食べ方を試してみたかったのですが、刺身がうますぎて、半身を全部食べてしまいました。
この魚、実は「煮魚がうまい」ということでありました。そこで、次は残った半身の半分を醤油と味醂で煮つけに。淀みのない美しい煮汁です。そしてひと口。うまい! やはりほのかな脂身が絶妙に効いています。そして透明感のある旨味。大変上品ですばらしい煮つけができました。
そしてさらに半身は…。少し塩を振り、キッチンペーパーで丹念に水分を抜いてから、冷蔵庫のチルド室で数日間、熟成させてみました。見た目、かなり鈍い感じです。しかし、うまそうな香り。薄く切ってみますと、あめ色のきれいな身。口に含みますと…うまい! 強烈な旨味が口の中に広がりました。数日前に食べた刺身がさらに進化し、もはや旨味の塊です。これはやめられない、魔性の旨味。恍惚のうちにこれもすべて食べてしまいました。舌触りは少しぬるぬるしており、まさに腐敗寸前。きわどい状態でありました(これはあくまでも自己責任ですので真似はおすすめできません)。
冬のタカノハダイは、新鮮な刺身も、煮つけにしても、また熟成させても噂にたがわない、いや、それ以上の逸品でした。ノトイスズミといい、冬の岩礁魚は侮りがたし!

  • こうして見ると、カラフルで美しい魚です。
  • 瘤のような突起も特徴的です。
  • 分厚い唇。
  • 尾鰭の水玉模様もおしゃれです。
  • 苦戦した鱗とり。腕力が要ります。
  • 美しい白身。
  • 刺身は、見るからにうまそうであります。
  • 煮つけ。透明感のある煮汁とともに。
  • 数日間チルド室で熟成させた身。
  • 肉の色が鈍くなり、いかにも熟成魚という感じ。
  • 薄く切ってみると、ねっとりしたあめ色で…。
  • これぞ魔性の旨味。箸が止まらなくなりました。