小学館のWEB図鑑Z「日本の魚とはどのようなものか」 〜The Natural History of the Fishes of Japan〜 編・監修/中坊徹次(京都大学名誉教授) 写真/松沢陽士ほか
知っているようで、じつは知らない事の多い魚の世界。
このWEB図鑑では、知られざる魚の姿や生態を、
撮り下ろしのスペシャルフォトと、研究者が書いた最新の解説文で徹底紹介します。
魚に関する、とっておきの蘊蓄が身につきます。
  • 第8回
  • 2016年8月更新
カジキ亜目〜剣状の吻をもつ、外洋性の大型魚〜
クロカジキ・シロカジキ・マカジキ
フウライカジキ・バショウカジキ・メカジキ
外洋を回遊し、特徴的な巨大な吻をもつカジキ類。今月は、マカジキ科、メカジキ科の2科からなるカジキ亜目を紹介します。世界の棲息域がわかる分布図も必見です。[分布図はNakamura(1985)を改変]
写真/藍澤正宏ほか
カジキ亜目 Billfishes Xiphioidei

マカジキ科とメカジキ科からなる。主上顎骨が伸出不能で、左右が癒合した前上顎骨に固着し、剣状の吻となる。外洋に生息し、高速遊泳するなどの生態から、かつてサバ科との類縁関係が議論されたが、近年のDNA研究により、サバ科よりも、アカメ科・アジ科やカレイ目に近いと考えられている。

マカジキ科 Istiophoridae

体はやや側扁。吻は断面が丸く、側面から下面に無数の小さな歯がある。体側の皮下に細長い鱗がある。尾柄部に2本の隆起線がある。大型の魚食性魚類。世界の熱帯〜温帯を中心に5属9種、日本に5属5種。スポーツフィッシングや漁業の対象になっている。5種ともに、春〜秋にかけて本州近海に来遊するが、出現時期や頻度、回遊の範囲に種間で差がある。雌は雄よりも大きく、特にクロカジキとシロカジキで顕著。

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※TL…全長
クロカジキ(クロカジキ属) Blue marlin Makaira nigricans Lacepède 1802

外洋に生息。体は少し側扁、背鰭は体高より低い。生時の体色が青いのが英名の由来。体側に15本前後の青白い横帯があるが、マカジキほどは目立たない。大西洋・インド洋・太平洋の熱帯を中心に分布。大西洋の個体群は、以前は別種にされていた。低緯度海域では雌雄が周年分布し、小型の雄が多く、産卵が周年みられる。本州太平洋側などの高緯度海域では、夏季に、大型の雌のみ摂餌のため来遊する。釣りによる最大記録は818kg。シロカジキと同様に、100kgを超えるものは、ほとんどが雌。大型のクロカジキの胃からは、しばしば吻で突き刺されたと考えられる傷痕を持ったカツオやマグロ類が出現する。クロカワ、カツオクイと呼ばれる。

シロカジキ(シロカジキ属) Black marlin Istiompax indica (Cuvier 1832)

沖合〜外洋に生息し、沿岸近くや大陸棚上にも出現する。体高が高く背鰭が低い。胸鰭が直立して動かない。第2背鰭は第2臀鰭より前。インド洋・太平洋の熱帯を中心に分布するが、まれに大西洋にも侵入する。インド洋、オーストラリア北東部、南シナ海などに多く、日本近海では少ない。最大記録は708kg。シロカワ、カタハリと呼ばれる。

マカジキ(マカジキ属) Striped marlin Kajikia audax (Philippi 1887)

沖合〜外洋に生息。体はやや側扁し、背鰭が体高より高い。生時は青く、体側に15本前後の青白い横帯がある。インド洋・太平洋の温帯を中心に分布。本州太平洋側では最も普通に見られ、漁業の対象。身に赤みがあり、刺身などで賞味される。最大記録は259kg。マカと呼ばれる。大西洋には同属のニシマカジキが分布する。

フウライカジキ(フウライカジキ属) Shortbill spearfish Tetrapturus angustirostris Tanaka 19152

マカジキ科で最も外洋に生息する小型種。体は側扁し、上顎は長く伸びない。第1背鰭は後半部でも比較的高い。インド洋・太平洋に分布するが、稀に大西洋にも侵入する。大西洋には同属で吻の長い3種が分布する。サンマカジキ、スギヤマなどと呼ばれるが、市場価値は低い。

バショウカジキ(バショウカジキ属) Sailfish Istiophorus platypterus (Shaw 1792)

沖合〜外洋に生息し、沿岸近くにも出現する。体は側扁し、第1背鰭が大きいのが特徴。大西洋(地中海)・インド洋・太平洋の熱帯を中心に分布。大西洋の個体群は、以前は別種にされていた。遊泳速度は時速100kmを超え、魚類で最も速いと言われている。小魚の群れに、長く伸びた吻をゆっくりと入れ、頭を素早く振ることで小魚を叩いて弱らせ、捕食する行動が観察されている。南日本では、夏〜秋に沿岸の定置網に入網する。バレンと呼ばれる。

メカジキ科 Xiphiidae

体は紡錘形に近い、腹鰭がない、尾柄部の隆起線は一つで強大、上顎は長く伸びて上下に平たい、などの点でマカジキ科と異なる。両顎の歯と体表の鱗は幼魚で見られる。世界に1属1種。

メカジキ(メカジキ属) Swordfish Xiphias gladius Linnaeus 1758

外洋に生息。脳を温める器官が発達しており、600m以深まで潜水可能で、中深層性の頭足類や魚類を食べる。大西洋(地中海)・インド洋・太平洋の熱帯〜亜寒帯に広く分布。延縄や突きん棒漁で漁獲される水産重要種。メカと呼ばれる。

下瀬 環(西海区水産研究所)
編集長の一口コラム

旅先での魚市場見学を、ひそかに楽しみにしております。特に海外となりますと滅多に行けるものではありませんので、気合が入ります。3年前の夏に訪れたイタリアのベネツィアも興奮状態で…。
まだ日の出前の暁闇。水の都の中央部にある魚市場がにわかに活気づいてきました。地中海産の様々な魚介類が、所狭しと並べられてゆきます(水の都ベネツィアの魚市場は、意外と小さい。まさに所狭し!)。マダイにマサバ、カタクチイワシ…おなじみの魚のようで、どこか日本のものとは違うのですよね。私のレベルでは、とてもにわかに同定できません。タコ、貝類、アカザエビもしかり。時間のあるときに調べてみるとして…。
そのような中、突然出てきました、メカジキ!これは確か、今のところ1属1種のはず。正真正銘のメカジキXiphias gladiusであります。種名までわかる魚が、ようやく現れてくれました。
はじめて出会った地中海のメカジキは、タイセイヨウクロマグロと思われるマグロと一緒に、床にごろんと並べられていました。どちらも体長1.5mくらいの小型です。そして少し目を離しているうちに、みるみる解体されてゆきました。解体は日本人から見るとかなり乱暴、よく言えば豪快。あまり切れそうもない包丁でゴシゴシと切られてゆきます。身は背骨ごと輪切りにして、最後には吻のついた頭とともに、店頭にディスプレイされました。日本では吻は船上で落とされてしまい、漁港に並んだ時点ですでに吻がないことが多いので、このディスプレイは新鮮でした。このカジキは、空も明るくなった時分には、プロと思しき人達に早々に買われてゆきました。
その日の夕方、街を散策していると、地元のレストランの店頭にメカジキの切り身が並んでいました。今朝のカジキかしら。朝、市場で見た切り身に比べ、美しくカットされていました。(編集部・K)

  • 水の都ベネツィアの夜明け
  • 街の中心部にある魚市場。意外と小規模。
  • 新鮮な魚介類が所狭しと並べられてゆきます。
  • マダイのなかま
  • マサバのなかま
  • カタクチイワシのなかま
  • アカザエビのなかま
  • 出てきました、メカジキ(右)!
  • 2人のおじさんに手早く解体されてゆきます。
  • 吻つきのディスプレイ
  • 切り身。脊椎骨つきの輪切り!
  • レストラン店頭では、美しくカットされていました。